家の天井裏からガタガタと音がする、台所に黒い糞が落ちている。そんな経験はありませんか?
ネズミは家に侵入すると、食品を荒らすだけでなく病原菌を運んだり、配線をかじって火災の原因になったりと、深刻な被害をもたらす厄介な害獣です。
この記事では、自力でできるネズミ駆除の具体的な方法から業者選びのポイントまで、実践的な情報をお伝えします。
ネズミ駆除が必要な理由とは?

ネズミが家に棲みつくと、さまざまなトラブルが発生します。具体的にどのような問題が起きるのか見ていきましょう。
- 病原菌や寄生虫による健康リスク
- 建物や家財への経済的損失
- 驚異的な繁殖スピード
病原菌や寄生虫による健康リスク
ネズミは体に多くの病原菌や病原性寄生虫を保有しています。走り回ることで糞尿をまき散らし、食品が汚染されれば食中毒を引き起こす可能性も。
また、ネズミに寄生するイエダニが人を刺すケースもあり、衛生面での懸念は見過ごせません。
建物や家財への経済的損失
柱や壁、家具をかじられると、修繕に高額な費用がかかります。特に配線をかじられると火災につながる危険があり、最悪の場合は家そのものを失うリスクも。
また、大量の糞尿で天井や床が汚れ、家の資産価値が下がってしまいます。
驚異的な繁殖スピード
ネズミは生後2~3ヵ月で出産が可能になり、年に4~8回、1回に5~12匹の子供を産みます。
放置すれば1年で数千匹、1万匹にまで増えるとも言われており、早期の対処が不可欠です。
家に住み着く3種類のネズミ
日本の住宅に侵入するネズミは、主に次の3種類です。それぞれの特徴を知ると、正しく駆除できます。
| ネズミの種類 | 体長 | 特徴 | 生息場所 | 警戒心 | 駆除難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
| クマネズミ | 17~22cm | 大きな耳と長い尾。垂直移動が得意で高いところを好む | 天井裏、壁の中、ビルの高層階 | 非常に強い | 難しい |
| ドブネズミ | 18~26cm | 太い胴体。泳ぎが得意で湿気を好む | 下水道、地下、台所周辺 | やや弱い | 比較的容易 |
| ハツカネズミ | 7~9cm | 小型で、1cm程度の隙間から侵入可能 | 屋内外を問わず幅広く生息 | 弱い | 容易 |
クマネズミ:都市部に増加中
近年、都市部で最も被害が多いのがクマネズミです。
運動能力が高く、壁やパイプを垂直に上り下りでき、天井裏やビルの高層階にも侵入します。警戒心が極めて強く、新しいものを避ける傾向があるため、罠にかかりにくいのが特徴。
また、従来の殺鼠剤(クマリン系)に耐性を持つ個体も出現しており、駆除に苦労する最大の要因となっています。
ドブネズミ:湿った環境を好む
ドブネズミは3種の中で最も体が大きく、性格も攻撃的です。
泳ぎが得意なため、下水管を通って侵入することもあります。クマネズミほど警戒心は強くなく、殺鼠剤にも反応しやすいため、比較的駆除しやすい種類。
ただし、台所や流し周辺の水気のある場所を好むので、衛生面の注意が必要です。
ハツカネズミ:小さな体で侵入
体が小さいハツカネズミは、1cm程度のわずかな隙間からでも侵入できるため、侵入対策が難しい一面があります。
一方で警戒心は弱く、粘着シートでの捕獲が効果的。穀類や種子を好むため、殺鼠剤よりも物理的な捕獲が推奨されます。
ネズミがいる4つのサイン
ネズミの存在を確認するには、「ラットサイン」と呼ばれる痕跡をチェックしましょう。
サイン①糞尿の発見
ネズミの糞は種類によって形状が異なります。
- クマネズミの糞:長さ6~10mm、細長く茶色や灰色
- ドブネズミの糞:長さ10~20mm、丸みがあり焦茶色や灰色
- ハツカネズミの糞:長さ4~7mm、小さく両端がとがり茶色
糞には独特のアンモニア臭があり、暗い場所でブラックライトを当てると尿の蛍光物質が光ります。糞を見つけたら、マスクやゴム手袋を着用して調査し、作業後は念入りに手を洗いましょう。
サイン②かじり跡
ネズミは前歯が伸び続けるため、常に何かをかじって歯を削ります。食品のパッケージ、家電のコード、柱や壁などにかじり跡があれば、ネズミがいる証拠です。
特に配線がかじられると火災の危険があるため、早急な対処が求められます。
サイン③黒っぽいこすり跡
ネズミは視力があまり良くないため、壁や床の隅に体を触れさせながら移動します。同じルートを何度も通ることで、体の油や汚れが壁に黒い跡を残します。
最初は灰色の小さな汚れですが、時間が経つと黒光りする線ができるのが特徴です。
サイン④足跡と音
ネズミが通ると小さな足跡が残り、尻尾を引きずった線状の跡も見られます。侵入口と思われる場所に小麦粉を撒いておくと、足跡がはっきりわかります。
また、天井裏からコトコトという小さな音が聞こえる場合も、ネズミがいる可能性が高いでしょう。
ネズミの侵入口と通り道の見つけ方

駆除を効果的に行うには、ネズミの行動パターンを把握することが重要です。
侵入口になりやすい場所
ネズミは屋外から以下のような場所を通って侵入します。
- 屋根下の通気口
- 電線導入部と壁の隙間
- 換気扇(汚れて閉まらないもの)
- 配管と壁貫通部の隙間
- 戸袋の隙間
- 屋根のひさし下
- 壁のひび割れや穴
- 建物と基礎の隙間
これらの場所に黒い跡やかじり跡があれば、侵入口として使われている可能性が高いです。発見したら、金属たわしやパテ、金網などでしっかりふさぎましょう。
通り道の特定
ネズミは壁際を走る習性があるため、壁に沿って糞や尿、黒い線跡が残ります。部屋の隅や壁際を重点的にチェックすれば、通り道が見つかるはずです。
通り道がわかれば、そこに罠や粘着シートを設置すると効果的に捕獲できます。
ネズミ駆除の3つの基本対策
ネズミ駆除の基本は、次の3つです。
- 侵入させない
- 食べ物を与えない
- 巣を作らせない
対策①侵入させない
ネズミは1cm程度の隙間があれば侵入できます。エアコンの配管貫通部、下水口、換気扇、シャッターの隙間などを、かじられにくい金属板やセメント、金属たわしでふさぎましょう。
侵入口をふさぐことが、再発防止の最も確実な手段です。
対策②食べ物を与えない

台所の整理整頓を心がけ、食材は冷蔵庫や密閉容器に保管してください。生ゴミは蓋付きの容器に入れ、床や排水口に食べ物を残さないことが大切です。
ペットフードや生け花、植木鉢の苗まで食べることがあるため、ネズミが食べられるものは全て管理しましょう。
対策③巣を作らせない

ネズミは新聞紙、段ボール、ティッシュペーパー、布類を巣の材料にします。床下、天井裏、押し入れ、引き出しなど、せまい場所を好んで巣を作るため、日頃からこれらの場所を清掃し、整理整頓を保ちましょう。
不要な紙類、ビニール類、布類は処分することで、巣作りの材料を与えません。
【必見】自分でできるネズミ駆除の方法
ネズミ駆除には、さまざまな資材や器具があります。
- 忌避剤
- 殺鼠剤:
- 粘着シート
- 捕獲器
- 超音波発生器
それぞれの特徴と使い方を見ていきましょう。
忌避剤:追い出しと侵入防止
忌避剤は、ネズミが嫌がるニオイで追い出したり、侵入を防いだりするアイテムです。
| タイプ | 特徴 | 設置場所 |
|---|---|---|
| スプレータイプ | 即効性があり、手の届かない場所に吹き付けられる | 天井裏、床下、壁の間 |
| 燻煙タイプ | 煙でネズミを追い出す。追い出し後は他の忌避剤で侵入防止が必要 | 天井裏、倉庫 |
| 設置タイプ(ゲル) | 持続性が高く、効果の持続期間がわかりやすい | 物置、押し入れ、密閉空間 |
忌避剤はネズミを殺さずに追い払うため、死骸処理の手間がかかりません。
ただし、効果は限定的で、早ければ翌朝には戻ってくることも。大量発生後よりも、予防策として使うのに向いています。
殺鼠剤:毒餌で駆除
殺鼠剤は、慢性毒や急性毒をネズミに食べさせて駆除する方法です。
設置する前に、周辺を掃除して他の食べ物がない状況を作りましょう。
ネズミは新しいものに警戒心を持つため、設置後1週間程度はそのままにして様子を見てください。
殺鼠剤を使う際の注意点は以下の通りです。
- 夏場の使用は避ける:死骸が悪臭を放つため、冬季の使用が推奨される
- 子供やペットがいる家庭では慎重に:誤飲のリスクがあるため、犬や猫を飼っている家庭には向かない
- 死骸の処理が必要:駆除後の処理は避けられない
近年、従来の殺鼠剤(ワルファリン)に耐性を持つ「スーパーラット」が増えています。その場合は、より強力な第二世代の殺鼠剤(ジフェチアロールなど)を使用すると効果が期待できます。
粘着シート:定番の捕獲方法

粘着シートは、ネズミ駆除の定番アイテムです。ネズミの通り道や餌場に設置し、体に粘着剤が付いて動けなくなったところを捕獲します。
粘着シートを効果的に使うコツは次の通りです。
- 通り道に複数枚設置:飛び越える隙間がないように敷き詰める
- 新聞紙を周囲に敷く:体の汚れを取り、粘着力を最大限に発揮させる
- 設置後3日間は動かさない:警戒心が強いため、場所を変えずに様子を見る
- 殺鼠剤と併用する:毒餌を食べたネズミは警戒心が低下し、捕まりやすくなる
捕獲後はダニや病原菌が繁殖するため、速やかに処分しましょう。粘着シートは水分や汚れに弱いため、屋外や床下では効果が薄れます。
捕獲器:檻で捕まえる

捕獲器には、エサで誘導して金具で挟むバネ式と、一度入ったら出られないカゴ式があります。
粘着シートと比べると捕獲効果は劣りますが、屋外や床下など、粘着シートが使いにくい場所で有効です。
ただし、カゴ式で捕獲したネズミは生きているため、殺処分が必要になります。
超音波発生器:音で追い払う
超音波発生器は、ネズミが嫌がる音を発生させて追い払う器具です。
ただし、使い続けるとネズミが慣れて戻ってくる可能性があるため、忌避剤と組み合わせて使うのが効果的です。
ネズミ駆除を業者に依頼する場合
自分での駆除が難しい場合や、被害が深刻な場合は、専門業者に依頼するのがおすすめです。
ただし、業者選びを失敗すると、高額請求や不十分な駆除で再発するリスクがあります。
ここでは、業者に依頼するメリットと選び方のポイント、費用相場を解説します。
業者に依頼するメリット
専門業者は、ネズミの種類や侵入経路を的確に特定し、再発防止まで含めた対策を行います。
天井裏や壁の中など、自分では手が届かない場所も徹底的に駆除してくれるため、確実性が高いです。
また、駆除後の清掃や消毒、侵入口のふさぎ作業まで一貫して対応してくれます。
業者選びのポイント
ネズミ駆除業者を選ぶ際は、次の点に注意しましょう。
| 実績と信頼性 | 創業年数、駆除実績件数、日本ペストコントロール協会への加盟 |
| 料金の明確性 | 見積もりが無料か、追加料金の有無を事前に確認 |
| 対応の速さ | 即日対応が可能か、24時間受付か |
| 保証期間 | 再発時の無償対応期間(1年~10年) |
| 口コミ・評判 | Googleマップなどでの評価、実際の利用者の声 |
極端に安い料金を提示する業者には注意が必要です。
国民生活センターによると、「約500円~」と表示されていたのに実際には「約15万円」請求されたトラブルも報告されています。
複数の業者から相見積もりを取り、料金だけでなく作業内容や保証も比較して選びましょう。
業者依頼の費用相場
ネズミ駆除を業者に依頼した場合の費用相場は、被害の程度や建物の大きさによって異なります。
- 軽度の被害・部分的な施工:2万~6万円程度
- 中度~重度の被害(30坪程度):10万~20万円程度
ただし、天井裏の清掃や消毒、断熱材の交換、侵入口の修繕などが必要な場合は、さらに費用がかかります。
正確な料金は現地調査を基にした見積もりで確認しましょう。
自治体のネズミ駆除支援サービス
ネズミ駆除に関する助成金や補助金は、2024年時点でほとんどの自治体にありません。
アドバイスや殺鼠剤の配布、捕獲器の貸し出しなど、補助サービスを提供している自治体はあるようです。
自治体が提供する主な支援内容
| 支援内容 | 提供している自治体の例 |
|---|---|
| 殺鼠剤の無料配布 | 東京都江東区、東京都荒川区(冬季限定) |
| 捕獲器の貸し出し | 東京都荒川区(バネ式・カゴ式) |
| 専門事業者によるアドバイス | 東京都大田区 |
| 団体向けの助成金 | 東京都中央区(町内会や商店街など) |
個人向けの助成金はほとんどありませんが、これらの支援サービスを活用すると、自分での駆除にかかる費用を抑えられます。
お住まいの自治体の公式Webサイトや保健所で確認してみましょう。
FAQ|ネズミ駆除のよくある質問
ここでは、ネズミ駆除に関するよくある質問にお答えします。
- ネズミ駆除は自分でやるべき?それとも業者に頼むべき?
- 殺鼠剤を設置しても食べてくれないのはなぜ?
- 殺鼠剤が効かないネズミがいると聞いたけど本当?
- 高層階でもネズミは侵入するの?
- ネズミ駆除に助成金や補助金はあるの?
- ネズミ駆除業者の料金が予想以上に高額だったらどうすればいい?
ネズミ駆除は自分でやるべき?それとも業者に頼むべき?
自分で駆除することは可能ですが、侵入経路をふさがないと再発しやすいです。粘着シートや捕獲器、殺鼠剤で駆除しても、ネズミにとって居心地の良い環境が残っていれば、また侵入してきます。
再発を防ぐには、侵入口の特定とふさぎ作業が不可欠。これが難しい場合や被害が深刻な場合は、専門業者に依頼するのが確実です。
殺鼠剤を設置しても食べてくれないのはなぜ?
天井裏を運動場として使っているだけで、餌場ではない可能性があります。その場合、巣に持ち帰れる分包タイプの殺鼠剤を使ってみましょう。
また、ネズミには貯食性があり、巣に持ち帰ってもすぐには食べないことがあります。気長に待つか、粘着シートなど別の方法に切り替えるのも手です。
殺鼠剤が効かないネズミがいると聞いたけど本当?
本当です。従来の殺鼠剤(ワルファリン)に耐性を持つ「スーパーラット」と呼ばれるネズミが増えています。特にクマネズミに多く見られる傾向です。
その場合は、より強力な第二世代の殺鼠剤(ジフェチアロール、ジフェナクムなど)を使用すると効果が期待できます。
高層階でもネズミは侵入するの?
はい、侵入します。クマネズミは垂直移動が得意で、壁やパイプを伝ってビルの高層階にも侵入します。
一般的にネズミは1~3階程度の低層階に多いとされますが、高層階でも繁殖しやすい環境が整っていれば、巣を作って増えていきます。
ネズミ駆除に助成金や補助金はあるの?
個人向けの助成金・補助金はほとんどありません。東京都中央区では町内会や商店街などの団体向けに助成金がありますが、個人住宅には適用されません。
ただし、多くの自治体で殺鼠剤の配布や捕獲器の貸し出し、専門家によるアドバイスなどの支援サービスを提供しています。お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
ネズミ駆除業者の料金が予想以上に高額だったらどうすればいい?
国民生活センターによると、Webサイトに「約500円~」と表示されていたのに実際には「約15万円」請求されたトラブルが増えています。
極端に安い料金を提示する業者には注意し、必ず複数の業者から相見積もりを取りましょう。見積もりが無料か、追加料金の有無を事前に確認することが大切です。
まとめ
ネズミ駆除は、早期の対処が何より重要です。1匹見かけただけでも、すでに複数匹が家に棲みついている可能性があります。
驚異的な繁殖力を持つネズミは、放置すれば1年で数千匹にまで増えてしまいます。
駆除の基本は「侵入させない」「食べ物を与えない」「巣を作らせない」の3つ。
自分で駆除する場合は、忌避剤、殺鼠剤、粘着シート、捕獲器などを状況に応じて使い分けましょう。ただし、侵入経路をふさがないと再発しやすいため、根本的な解決には侵入口の特定とふさぎ作業が不可欠です。
自分での駆除が難しい場合や被害が深刻な場合は、専門業者に依頼するのも選択肢です。業者を選ぶ際は、実績、料金の明確性、保証期間、口コミなどを比較し、必ず複数の業者から相見積もりを取って慎重に判断しましょう。
ネズミ駆除は根気と継続が求められる作業ですが、適切な対策を講じれば、清潔で安全な住環境を取り戻せます。この記事で紹介した方法を参考に、一日も早くネズミのいない快適な生活を手に入れてくださいね。


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